「おばあちゃん、八上姫(やがみひめ)は結局誰と結婚したん?」
「八上姫はな、八十神(やそがみ)たちの求婚を全部断って『わたしは大穴牟遅(おおなむじ)と結婚するんや』って言うたんやで。それ聞いた八十神たちは、もうめちゃくちゃ怒ってしもてな、大穴牟遅を殺そうと企み始めたんや。」
「うわっ!怖い話やなぁ。どうやって殺そうとしたん?」
まずな、八十神たちは伯耆国(ははきのくに)の手間山(てまのやま)っていうとこに大穴牟遅を連れていってな、こんな風に言うたんや。『この山には赤い猪がおる。それをわしらが追い下ろしたらお前は下で待ち受けて捕まえろや。もし捕まえへんかったらお前を殺すぞ』ってな。
「そんなん無理やん!赤い猪なんか…。」
「ほんまになぁ。けどな、実は赤い猪やのうて焼けた大石やったんや。それを火で熱してから山から転がし落としてきてな、大穴牟遅はそれを捕まえようとして焼け石に焼かれて死んでしまったんや。」
「ひどすぎる!ほんまに大穴牟遅は死んでもうたん?」
「大穴牟遅の母ちゃんが悲しんでな、高天原(たかまがはら)に上って神産巣日(かむむすひ)の命に助けを求めたんや。それで、刮貝比売(きさがひひめ)と蛤貝比売(うむぎひめ)っていう二人の女神が、大穴牟遅を治療しに来てくれたんやで。」
「どんな治療をしたん?」
「刮貝比売は貝殻を削って粉にしてな、蛤貝比売はそれを蛤の汁で溶いたんや。それを塗ったら、大穴牟遅は元通り元気になって立ち上がったんやで!」
「おお!すげ〜助かったんやな。」
「そやけどな、それで終わらんねん。八十神たちはまた大穴牟遅をだまして、今度は山に連れ込んで大木の間に押し込んで楔(くさび)を引き抜いて木に挟ませてまた殺してしもたんや。」
「えっ、また死んでもうたん?」
「そうや。でも、母ちゃんがまた泣きながら探し出してなんとか大穴牟遅を木から取り出してもう一度復活させたんや。」
「大穴牟遅すごいな、何回も死んで生き返るんやなぁ…。」
「ほんまにな。けど、もうここにおったら命が危ないからって、母ちゃんが大穴牟遅を紀伊国(きいのくに)の大屋毘古(おおやびこ)神のところに送ったんや。」
「それで八十神たちはどうなったん?」
「八十神たちはな、また追いかけてきて、大屋毘古神に『大穴牟遅を引き渡せ』って言うたんやけど、大屋毘古神は木の間に大穴牟遅を逃がしてな『須佐之男命(すさのおのみこと)がいる根の堅州国(ねのかたすくに)に行け』って教えてくれたんや。」
八十神の迫害は、嫉妬と妬みの恐ろしさを描いた神話です。大穴牟遅は何度も殺されかけますが、その都度母の助けと神々の力で復活を果たし最終的には須佐之男命の元へ向かいます。この物語は、困難な状況に直面しても希望を失わずに戦い続けることの大切さを教えてくれます。
コメント