「ばあちゃん、猿田毘古神(さるたひこのかみ)って、どんな神様なん?」
「猿田毘古神はな、天孫降臨のときに、道案内をした神様や。大きな体で、顔も真っ赤やったんやて。そやから、邇邇芸命(ににぎのみこと)が天降りする道をちゃんと導いてくれたんや。」
「へぇ~、その猿田毘古神って、なんでそんなことしてくれたんやろ?」
「それはな、彼も天つ神(あまつかみ)の御子が降りてくることを聞いて、それを迎えようと思ってやってきたんや。ほんまにお人よしで、ええ神様やったんやで。」
「猿田毘古神、すごいなぁ。でもその後、何があったん?」
「猿田毘古神はな、海で漁をしとったときに、比良夫貝(ひらぶがい)に手を挟まれて、海に沈んでしまったんや。そのときのことを『底御魂(そこみたま)』って呼んでるんや。」
「えぇ!?沈んだんか…それでどうなったん?」
「海の底に沈んだ猿田毘古神やけど、彼の魂が海水と共に上がってくるとき、その名は『つぶたつ御魂(みたま)』、泡が弾けるときには『あわさく御魂』って呼ばれてて、今も魂として海に存在してるんやで。」
「そんなことがあったんか…。でも、そのあと何があったん?」
「天宇受売命(あめのうずめ)は、猿田毘古神を送り届けてから、海の魚たちを集めて、『おまえら、天つ神の御子にお仕えするか?』って聞いたんや。みんな『お仕えします』って答えたんやけど、海鼠(なまこ)だけが答えんかったんや。」
「それで、その海鼠どうなったん?」
「天宇受売命はな、『この口は答えん口か』言うて、海鼠の口を小刀で裂いたんや。それが今でも海鼠の口が裂けとる理由なんやで。」
「それ、めっちゃ怖い話やなぁ。でも、なんでそんなことしたんやろ?」
「それは、神様に逆らうことが許されへんからやろな。そやけど、猿女君(さるめのきみ)たちは、猿田毘古神の名前を受け継いで、代々祭りを守ってるんや。それに、志摩国(しまのくに)からの初物の魚介類は、彼らに分かち与えられて今も大切にされてるんや。」
「なるほど、だから女君っていう名前が残ってるんやな!」
「そうや。昔の話には、今に繋がるいろんな意味があるんやで。猿田毘古神も天宇受売命も、それぞれの役割を果たして日本の神話に深く関わってるんや。」
「ほんまに面白いなぁ。もっとこういう話、聞きたいわ!」
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