「ばあちゃん、豊玉毘売(とよたまびめ)がどうしたん?」
「豊玉毘売は、火遠理命(山幸彦)のもとに来て、自分が出産の時期になったから地上で生むことにしたんや。海の中で生むのは良くないと考えたんやって。」
「それで、どこで生んだん?」
「海辺の渚に、鵜の羽を使って産屋を作ったんや。でも、その産屋がまだ完成しないうちに、豊玉毘売は陣痛が激しくなって産屋に入ったんや。」
「へぇ、それで火遠理命はどうしたん?」
「豊玉毘売が、出産の時には本来の姿になると言うて、自分を見ないでほしいと頼んだんや。でも、火遠理命はその言葉が気になって、密かに産屋を覗いたんや。」
「それで、何が見えたん?」
「豊玉毘売が実は大きな鰐になってたんや。それを見た火遠理命は、びっくりして逃げ出したんや。」
「火遠理命は怖かったやろなぁ。」
「うん、ほんで豊玉毘売はそのことが恥ずかしかったから、産んだ子を置いて海の国に帰ったんや。そして、その子に『鵜葺草葺不合命(うがやふきあわせずのみこと)って名前を付けたんや。」
「でも、火遠理命はどうしたん?」
「火遠理命は、豊玉毘売が帰った後も、子供の養育を手伝うために妹の玉依毘売(たまよりびめ)を送り、歌を贈ったんや。」
「どんな歌?」
「火遠理命は、自分が愛した妻のことを忘れないと歌ったんや。それに対して、豊玉毘売は『忘れないで』という歌を贈ったんやで。」
「なんかええなぁ、それからどうなったん?」
「その子、鵜葺草葺不合命は高千穂宮に580年間いたんや。子孫には五瀬命(いつせのみこと)、稲氷命(いなひのみこと)、御毛沼命(みけぬのみこと)、若御毛沼命(わかみけぬのみこと)がいて、それぞれが波の上を渡ったり海に入ったりしたんや。」
「結局、その子孫たちはどうなったん?」
「御毛沼命(みけぬのみこと)は波の上を踏んで常世国に行ったし、稲氷命(いなひのみこと)は母の国の海原に入ったんや。物語が続くんやけど、火遠理命の子孫たちはそれぞれに役割を果たしているんや。」
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