「ばあちゃん、この前の山幸彦の続きの話してくれへん?」
「おっ、そやったな。山幸彦(火遠理命)が海辺で泣きながら座ってると、塩椎神(しおつちのかみ)がやって来てな、『なんで泣いてるん?』って訊ねてん。」
「それで、山幸彦はなんて言うたん?」
「山幸彦は、『兄ちゃんと釣具を交換したら、その釣針をなくしてしもたんや。で、兄ちゃんが『釣針を返せ』言うて、どんだけ釣針作っても納得せえへんねん』って話したんや。」
「そうやったな…。それで塩椎神はどうしたん?」
「塩椎神はな、『私がええ方法を考えたるわ』って言うて、竹で編んだ籠の小船を作ってくれたんや。その船に乗ってしばらく流されるように言うたんや。」
「それで、山幸彦はどうしたん?」
「山幸彦は言う通りに進んで、塩椎神が教えてくれた通りに行くと、ほんまに魚の鱗みたいに家が並んだ宮殿があったんや。それが綿津見(わたつみ)の宮殿やったんやで。」
「すごいなぁ…。それで、宮殿の中で何があったん?」
「山幸彦が宮殿の門に着くと、泉のほとりにある桂の木の上に登ったんや。すると、豊玉毘売(とよたまびめ)っていう娘が出てきて、水を汲もうとしてん。そこで、山幸彦が水を求めたんやけど、泉の水に玉を吐き入れて玉が器にくっついてしもたんや。」
「へぇ、玉がくっついてどうなったん?」
「その玉が器にくっついたまま、豊玉毘売に渡されたんや。豊玉毘売はその玉を見て不思議に思って、外に出て山幸彦の姿を見て一目惚れしたんや。」
「それでどうなったん?」
「豊玉毘売は父の綿津見(わたつみ)に報告して、綿津見が門の外に出て山幸彦を見て、『これは天津日高の御子、虚空津日高(そらつひこ)だ』と分かって宮殿の中に案内したんや。」
「それでどうなったん?」
「綿津見は山幸彦を迎えて、海驢(あしか)の皮の畳を重ねてその上に絹の畳を敷いてたくさんのごちそうを用意したんや。そして豊玉毘売と結婚させたんやで。」
「わぁ、ほんまに素敵な話やなぁ。山幸彦が海神宮で幸せになったんやな。」
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