「ほんでな、イザナギさんは黄泉の国から帰ってきて、『なんて穢(けが)らわしいとこに行っとったんや!体を清めなあかん』言うて、日向(ひむか)の橘の小門(こど)の阿波岐原(あわぎはら)いうとこで禊ぎを始めたんや。」
「禊ぎって、なんなん?」
「禊ぎ(みそぎ)言うたら、水で体を清めて穢れを落とす儀式や。イザナギさんはな、身につけてたもんを次々に投げ捨てて、そのたんびに神様が生まれてきたんやで。」
「投げ捨てるだけで神様が出てくるん?」
「そやねん。まず杖を投げたら『衝立船戸(つきたつふなと)』、帯を投げたら『道之長乳歯(みちのながちは)』って神様が生まれたんや。ほんで、袋やら衣やら投げるたんびに神様が生まれて、とうとう12柱も神さんができたんやで。」
「めっちゃいっぱい神様おるやん!」
「そんでな、イザナギさんは『上の流れは速い、下の流れは遅い』言いながら中流で身を清めたんやけど、そのときに『八十禍津日(やそまがつひ)』と『大禍津日(おおまがつひ)』いう邪悪な神が生まれたんや。」
「えっ、なんで悪い神が生まれたん?」
「それはな、黄泉の国で穢れに触れたからなんや。けどな、その後に邪気を消すために『神直毘(かむなおび)』『大直毘(おおなおび)』『伊豆能売(いずのめ)』いう神様が生まれて、ちゃんと浄化されたんやで。」
「なるほど、バランス取れてるんやな。」
「さらに水の底で体を洗うと『底津綿津見(そこつわたつみ)』、中ほどで洗うと『中津綿津見(なかつわたつみ)』、水の表面で洗うと『上津綿津見(うわつわたつみ)』いう三柱の海神(わたつみ)が生まれたんや。これらの神は安曇連(あずみのむらじ)って一族の祖先として祀られてるんやで。」
「へぇ、海の神様か…。住吉大社にも祀られてるんやろ?」
「そやそや。よぉ知ってるやん!ほんでな、もっと大事なんは、左目を洗ったときに『天照大御神(あまてらすおおみかみ)』が生まれたことやねん!」
「あ、天照大御神! 太陽の神様やんな?」
「そうや。次に右目を洗ったときに『月読命(つくよみのみこと)』が、鼻を洗ったときに『須佐之男命(すさのおのみこと)』が生まれたんや。これが三貴子(さんきし)って呼ばれる偉い神様たちやねん。」
「おぉ、太陽、月、そして嵐の神様か…。めっちゃパワフルやん!」
「ほんでな、イザナギさんはめっちゃ喜んで、『わしはこんな貴い子を得た』言うて、天照大御神には『高天原(たかまのはら)』、月読命には『夜の世界』、須佐之男命には『海原』をそれぞれ治めるように命じたんや。」
「なるほど!それぞれの役割がちゃんと決められてるんやなぁ。でも、須佐之男命って、なんで海原なんやろ?嵐の神様やのに…?」
「そやな、それにはまた深い話があるんやけど、それは次の話で説明するわな!」
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