
「ばあちゃん、古事記の最後の話ってどんな内容なん?」



「さて、最後の話は当芸志美美(たぎしみみ)の反逆についてや。神武天皇(じんむてんのう)が亡くなったあと、その異母兄である当芸志美美が、皇后の伊須気余理比売(いすけよりひめ)を妻にして、その三人の弟たちを殺そうと計画したんや。」



「うわ、そりゃすごいな。どうなったん?」



「伊須気余理比売がその計画に心を痛めて、歌で御子たちに警告を送ったんや。」



「どんな歌やったん?」



「歌われたのは、こんな内容やったんや。」



「狭井河(さいかわ)の方から雲が立ち広がって来て、畝傍山(うねびやま)では木の葉が鳴り騒いでいる。大風が吹き出そうとしている。」



「さらに詠まれた歌はこうやった。」



「畝傍山(うねびやま)では、昼間は雲が揺れ動き、夕方になると大風の吹く前ぶれとして、木の葉がざわめいている。」



「それで、その御子たちはどうしたん?」



「この歌を聞いた御子たちは驚いて、すぐに当芸志美美を殺そうとしたんやけど、神八井耳(かむやゐみみ)の手が震えてしまって、殺すことができなかったんや。」



「そのとき、神沼河耳(かむぬなかわみみ)が兄の武器を受け取って、当芸志美美を殺したんや。その後、神沼河耳は建沼河耳(たけぬなかわみみ)と名を改めたんや。」



「それで、神八井耳はどうなったん?」



「神八井耳は弟の建沼河耳に皇位を譲ったんや。『私は敵を殺すことができなかった。あなたが完全に敵を殺したから、私は兄として上に立つべきではない。あなたが天皇となって、天下をお治めなさい』と言ったんや。」



「その結果、建沼河耳が天下をお治めることになったんや。神武天皇の年齢は百三十七歳で、御陵は畝火山(うねびやま)の北の方にあるんやで。」



「すごい話やなぁ。これでこのシリーズが終わりなん?」



「うん、これで一連の物語が締めくくられるわけやけど、ほんまに多くの歴史的な出来事が詰まった話やったなぁ。」



「ばあちゃん、長い間ありがとう!この話を聞くの、楽しかったわ。」



「こちらこそ、聞いてくれてありがとうな。日本の歴史や神話って、ほんまに奥が深いもんやで。」
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