㉟ 布都御魂と八咫烏

「ばあちゃん、神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこ)が熊野村に着いた時、どんなことがあったん?」

「そうやねん。熊野村に着いた時、大きな熊がちらりと見えたんやけど、その後、姿を消してしまったんや。それで、神倭伊波礼毘古命は急に正気を失って、兵士たちもみんな気を失って倒れてしもたんや。」

「それは怖いなぁ。」

「ほんまに。そこで、熊野の高倉下(たかくらじ)が一振りの太刀を持って、天つ神(あまつかみ)の御子(みこ)が倒れてるところにやって来たんや。そしてその太刀を奉ると、天つ神の御子はすぐに正気を取り戻して起き上がったんや。」

「その太刀には何か特別な力があったんかなぁ?」

「うん、その通りやで。その太刀を受け取ると、熊野の荒ぶる神も自然に切り倒されたんや。そして兵士たちも正気を取り戻して立ち上がったんや。」

「高倉下はその太刀についてどう説明したん?」

「高倉下は、夢で天照大御神(あまてらすおおみかみ)と高木(たかぎ)の神からお告げを受けたんや。葦原中国(あしはらなかつくに)が騒然としてるから、建御雷(たけみかづち)に降りて行くように言われたんやけど、建御雷は太刀で平定する方がええ言うたんや。」

「それで、どんな指示があったん?」

「高木の指示で、天つ神の御子を奥の方に進ませないように言われたんや。荒れた神がたくさんおるから、八咫烏(やたがらす)を遣わして、その烏が先導するように進めと言われたんや。」

「八咫烏って、どういう役割をしてたん?」

「八咫烏は先導して、神倭伊波礼毘古命が進むべき道を示したんや。これで吉野川(よしのがわ)の川下に着いたんやけど、そこで漁業具を作って魚を取ってる人に出会ったんや。」

「その人は誰やったん?」

「その人は国つ神(くにつかみ)で、名は贄持之子(にえもつのこと)やったんや。この人は阿陀(あだ)の鵜飼部(うかいべ)の祖先やねんで。」

「他にどんな人に出会ったん?」

「次に尾の生えた人が井戸から出てきたんや。井戸の中は光ってて、その人は井氷鹿(いひか)と名乗ったんや。この人は吉野首(よしののおびと)の祖先やで。」

「それから?」

「さらに山に入ると、また尾の生えた人が岩を押し分けて出てきたんや。その人は石押分之子(いわおしわくのこと)やったんで、天つ神の御子を迎えに来たんや。この人は吉野の国栖(くず)の祖先やで。」

「そして、宇陀に進んだん?」

「そうや、山坂を踏み分けて宇陀に進んで、そこを宇陀の穿(うだのうかち)と呼ぶようになったんや。」

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この記事を書いた人

- 名前: トシ
- 年齢: 1965生まれ
- 職業: フリーランス
- 出身地: 大阪
-「神社巡り400社以上達成、御朱印収集と旅の楽しさをブログで発信」

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