「さてな、スサノオさんは高天原(たかまのはら)から追い出されて出雲の肥河(ひのかわ)っちゅう川の上流に降り立ったんや。」
「出雲って今の島根県にある所やんな? そこで何があったん?」
「そやねん。川のほとり歩いとったらな、箸が川を流れてきたんや。ほんでスサノオさんは『あ、上流に人が住んでるな』思て川上に上がっていったんや。」
「で、そこには人がおったん?」
「そうやねん。そこには、おじいさんとおばあさんがおって、その真ん中に若い娘を置いてみんな泣いてたんや。ほんでスサノオさんが『お前ら誰や? なんで泣いてるんや?』って聞いたんや。」
「それでそのおじいさんが何て答えたん?」
「おじいさんはな、『わしは国つ神、大山津見(おおやまつみ)の子で名を足名椎(あしなづち)言う。これは妻の手名椎(てなづち)や。それで泣いてるこの娘は櫛名田比売(くしなだひめ)言うんや』って言うたんや。」
「なんでそんなに泣いてたん?」
「足名椎さんが言うにはな、昔は八人娘がいてんけど毎年、八俣の大蛇(やまたのおろち)っちゅう恐ろしい大蛇がやってきて娘を次々と食うてもうたんや。ほんでな、今年もまたその大蛇が来る時期になってもうて泣き悲しんどったんや。」
「それは悲しいなぁ…。その大蛇てどんなんやったん?」
「そりゃ恐ろしいで。八つの頭と八つの尾がある巨大な蛇でな、胴体には杉や檜の木が生えとるんや。ほんで目は酸漿(ほおずき)みたいに真っ赤で体中が血で爛(ただ)れとるんやって。」
「めっちゃ怖いやん!それでスサノオさんはどうしたん?」
「スサノオさんはな、『もしその娘を俺の嫁にくれるんなら、大蛇を退治してやるわ』言うたんや。ほんで足名椎さんはびっくりして『お名前は?』って聞いたんや。」
「そら、誰かわからん人に娘を任せるのは怖いもんな。」
「そやねん。ほんでスサノオさんが『俺は天照大御神(あまてらすおおみかみ)の弟やで。高天原から降りてきたんや』言うたら、足名椎さんと手名椎さんは驚いて、『娘を差し上げます!』言うてん。」
「それでスサノオさんはその娘を助けたん?」
「そうやで。スサノオさんはその娘を守るために櫛に姿を変えて自分の髪に挿し込んだんや。ほんで足名椎さんたちに命じて濃い酒を八つの桟敷(さじき)に置いて大蛇を待ち構えたんや。」
「大蛇は酒に弱かったん?」
「そうや! 八俣の大蛇はその酒を飲んで酔っ払って寝てしもうたんや。ほんでスサノオさんが十拳剣(とつかのつるぎ)を抜いて、大蛇をズタズタに斬り倒したんや。」
「さすが暴れん坊のスサノオさん、かっこええな!でも、その剣で何か起こったん?」
「実はな、大蛇の尾を斬ったとき、スサノオさんの剣が欠けてん。ほんで怪しんで尾を割ってみたら中からめっちゃ立派な太刀が出てきたんや。この太刀が有名な草薙(くさなぎ)の剣や。」
「そんな凄い剣が大蛇の中にあったんやな。」
「そやで。それをスサノオさんは天照大御神に献上したんや。ほんでスサノオさんはその後、出雲の須賀っちゅう場所に新居の宮を建てて住むことになったんや。」
「へぇ、そういうことやったんか!須佐之男さんって最初はちょっと乱暴な神様かと思ったけど、最後には大蛇を倒して宮まで建てるなんて凄いなぁ。」
「そうやねん。スサノオさんは確かにやんちゃやったけど結局は人々を守る立派な神様やったんや。」
「おばあちゃん、また次も神話の話教えてや!」
「もちろんやで。次はどの神様の話にしようか、楽しみにしときな。」
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