「なぁばあちゃん、さっきの話で大国主が国を治めてたけど、他の神様がどうして葦原中国を平定しようとしたん?」
「ええ質問やなぁ。天照大御神(あまてらすおおみかみ)っていう、太陽の神様やろ、この神さんが言うたんや。『この豊葦原の国は、わたしの子である天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)が治めるべきや』ってな。それで天忍穂耳を降ろして、この国を統治させようとしたんやけど…」
「けど…?どないしたん途中で何かあったん?」
「そやねん。天忍穂耳命が降りる途中で気づいたんや。『なんかこの国、めっちゃ騒がしいぞ』って。それで、一旦戻って天照大御神に報告しに行ったんや。それで、天照大御神と高御産巣日(たかみむすひ)っていう神様が神々を集めてどうしたらええか相談しはったんや。」
「ほう、それでどうなったん?」
「まず最初に遣わされたんが、天菩比(あめのほひ)っていう神様や。でも、この神様、降りた先で大国主に媚びへつらって三年も戻ってこんかったんや。」
「えぇ!?それでどうしたん?」
「そやから、次は天若日子(あめのわかひこ)っていう神さんを遣わすことになったんや。この神さんには、天真鹿児弓(あまのまかこゆみ)と天羽羽矢(あまのははや)っていう特別な武器も持たせてな。」
「なにそれ、かっこええなぁ!その武器で、乱暴な国つ神を倒したん?」
「そやけど、天若日子もな、葦原中国に降りたあと、大国主の娘・下照比売(したてるひめ)と結婚してその国を自分のもんにしようとしてしまったんや。それで八年も戻ってけえへんかった。」
「なんや、二人目もあかんかったんかいな…。ほんで、天照大御神はどうしたん?」
「天照大御神と高御産巣日がまた神々に相談して、今度は鳴女(なきめ)っていう雉(きじ)を遣わすことにしたんや。雉に天若日子に問いただすように命じたんやけど…」
「雉?鳥がメッセージを運んだんやな。けど、天若日子はその雉をどうしたん?」
「天若日子は、天探女(あめのさぐめ)っていう神さんの言うことを聞いて、その雉を射殺してもうたんや。使わされた神のメッセージも無視してな…。」
「えぇ…それでどうなったん?」
「その射た矢がな、天に戻ってきたんや。それを見た高木神(たかぎのかみ)は、『もし天若日子が悪いことをしてるなら、この矢が天若日子に当たって命を奪う』って言うて、その矢を逆さにして投げ返したんや。」
「うわぁ、それでどうなったん?」
「天若日子は、朝に寝てた時にその矢が胸に当たって死んでしまったんや…。これが『返し矢』っていう古い言葉の由来やねん。」
「えぇ…なんか悲しい結末やな。雉も戻ってこなかったんやな?」
「そやねん。それで、今でも『雉のひた使』って言うたら、行ったきり帰らん使者のことを指すようになったんや。」
「へぇ、昔からそんな諺(ことわざ)があったんやな…。でもなんで天若日子はそんな邪心を抱いたんやろな。」
「神様やからといっても、心の中には人と同じように欲や迷いがあるんかもしれんね。だからこそ、神様にしても慎重に行動せなあかんって教えられたんやろな。」
「うん…なんか考えさせられる話やな。もっと神話について知りたくなったわ。」
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