「さてさて、次のお話やけど、これは大国主(おおくにぬし)の神様のお話やで。大国主にはな、兄弟が山ほどおってんな。どういうわけか、みんな大国主にこの国を譲ることになったんや。」
「なんで譲ったん?なんか理由あったん?」
「そうやなぁ、それはなぁ…兄弟たちが因幡(いなば)の八上比売(やがみひめ)に求婚しようと、わんさか集まったんやけど大国主だけが違う目で見とったんや。みんなで因幡に出かけたとき大国主だけ荷物を背負わせられて、ただの従者扱いやったんやで。」
「うわぁ…それ、かわいそうやなぁ」。
「せやろ?でな、その途中、気多の岬ってとこに差し掛かったとき丸裸の兎が横たわっとったんや。」
「え?裸の兎?なんでなん?」
「その兎、ちょっと悪知恵を働かせたんやな。隠岐島(おきのしま)から因幡に渡ろうとしたんやけど海を渡る手段がなくて、海におるサメをだましてなサメの上を踏んで渡ろうとしたんや。でな、『どっちが仲間多いか数えようぜ』って言うて、サメを並ばせてその上を踏んで渡ったんやけど最後に『お前、だまされたでー』って言うたら怒ったサメに皮を剝ぎ取られてしもたんや。」
「そらあかんわ!そらサメ怒るわな。」
「せやろ?その兎が泣いておったら、大国主の兄弟たちが通りがかって『潮水で体洗って、風に当たって寝てれば治るで』って教えてん。で、兎はその通りにしたら、かえって皮がひび割れてもっとひどくなってもうたんや。」
「あー、かわいそうに。誰か正しい治し方教えたらええのに。」
「そこで登場するのが大国主や。大国主は最後に来て、その兎にちゃんとした治し方を教えたんや。『川の真水で体洗って、蒲(がま)の花粉をまいてその上に寝転がったら元通りになるで』ってな。」
「ほんで、兎は元に戻ったん?」
「そうや、元通りピカピカの白兎になったんや。それがな、因幡の白兎やって呼ばれて今でも『兎神』として祀られてるんやで。」
「へぇ~、大国主って優しい神様なんやなぁ。」
「せやで。それでその兎はな、八上比売は兄弟たちには嫁がんって言うて大国主に嫁ぐんやって予言したんや。」
「兎、感謝してたんやな!」
因幡の白兎は、日本神話の中でも特に有名なエピソードです。この物語は、困難な状況にある者を助けることで未来を開くというテーマが込められています。大国主神の優しさと知恵が、この白兎との出会いで際立ちその後の物語へと繋がる重要な一場面です。
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