「ばあちゃん、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が葦原中国(あしはらなかつくに)を治める神様を選んだんやろ?でも、誰を選んだん?」
「そうやね。最初はな、天照大御神と高木(たかぎ)神が、天忍穂耳(あめのおしほみみ)に天降って国を治めるように言うたんやけど、天忍穂耳がな、こう言うたんや。」
「なんて言うたん?」
『わたしが天降ろうとした間に子供が生まれました。この子が天降る方がええんちゃうかな』ってな。」
「え?自分で行かんと、子供に任せるん?」
「そうや。天忍穂耳の子供、名を天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)って言うねんけど、この子に任せることになったんや。」
「その名前、めっちゃ長いな…。」
「せやろ?でも、この子が次の主役や。だから、天照大御神も『この豊葦原の国をお前が治めるんやで』って委任したんや。」
「それで、天降る準備を始めたんか?」
「そうそう。いよいよ天降ろうとしたときにな、道の辻に不思議な神が立っとってな。」
「不思議な神って?」
「その神はな、上は高天原を照らし、下は葦原中国を照らしておったんや。ちょうど天と地の境目に立っとる感じやな。」
「そんな神、誰なん?」
「それがな、猿田毘古(さるたびこ)神っていう神様や。この神様が天つ神(あまつかみ)の御子が天降ることを知ってお出迎えに来てたんや。」
「へぇ~、わざわざお出迎えに来てくれたんやな。」
「そうやねん。それで、天宇受売(あめのうずめ)神が先に猿田毘古に会いに行って、『誰や?天つ神の御子が来る道におるんは?』って聞いたら、猿田毘古がこう答えたんや。」
「なんて?」
『わたしは国つ神(くにつかみ)で、猿田毘古と申します。天つ神の御子をお迎えに来たんです』ってな。」
「へぇ~、ちゃんとした挨拶もして、天つ神を迎えに来るなんて、ええ神様やなぁ。」
「せやねん。猿田毘古はこの後も天つ神の御子の道案内をする大事な役割を果たすねん。」
「神話の中でも、助け合いの精神があるんやなぁ。」
「ほんまにそうや。神様同士も助け合って、国を治めるために力を合わせるんや。これが神話の面白いところやね。」
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